ふだんの暮らしの中で、誰もがかろやかに参加できる”カジュアルソーシャルアクション”を社会全体で実践するために、スポーツができること

スポーツを楽しめる社会を守るために、スポーツの力でサステナビリティの実現を目指している浦安D-Rocks。社会との共創によってサステナビリティの実現をめざす「D-Rocks Sustainability Hub」では、様々な方々へのインタビュー、対談を通して、さまざまな立場の方々にサステナビリティの実現について発信していきます。
第6回は、認定NPO法人「deleteC」の代表理事 小国士朗さんにご登場いただきます。認定NPO法人「deleteC」は「みんなの力で、がんを治せる病気にすること」をミッションに掲げ、ふだんの暮らしの中で誰もがかろやかに参加できる“カジュアルソーシャルアクション”を通して、寄付と啓発にてがん治療研究を応援する取り組みを展開しています。
浦安D-Rocksは「deleteC」のシンプルで強い想いに賛同し、スポーツの力を通じて寄与していくため、2022年8月以降「deleteC」プロジェクトに参画しています。これまで啓発活動、並びに寄付を目的としたdeleteCマッチの開催をはじめ、ピンク色のジャージの作成・着用、グッズ制作、販売し売り上げの一部を寄付などを実施してきました。
今回は「がん」というセンシティブなテーマでありながら、ユニークな切り口で、誰もがかろやかに参加できる仕組みをつくってきた小国さんに、改めて「deleteC」の活動や浦安D-Rocksとの共創について、これまでの取り組みを振り返りながら、今後の展望を語ってもらいます。
ラグビーチームが、がんと向き合うカジュアルソーシャルアクション「deleteC」に参画した理由
浦安D-Rocks 内山:小国さんとこうやってお話しするのは、意外にも初めてかもしれないですね。今日は改めて「deleteC」プロジェクトのことや、浦安D-Rocksとの共創についてお話しできればと思っています。
小国さん:ぜひ、よろしくお願いします。
浦安D-Rocks 内山:まずは小国さんが代表理事を務められている「deleteC」についてご紹介をお願いします。
小国さん:認定NPO法人「deleteC」は、「がんを治せる病気にすること」をミッションに、その未来を1日でも早く手繰り寄せることを目指して、2019年に設立しました。誰もがふだんの暮らしの中で、かろやかにがん治療研究を応援できる仕組みをつくり、がん治療研究への寄付と啓発につながる”カジュアルソーシャルアクション”を展開しています。
具体的には、プロジェクトに参加する企業・団体が自身のブランドロゴや商品、またはサービス名からCancerの頭文字である「C」の文字を消したり、deleteCのロゴやコンセプトカラーを使うなどし、オリジナル商品・サービスを企画しています。
また、毎年9月のがん征圧月間には「deleteC大作戦」と題し、SNSの投稿、買い物、歩く、学びなど4つのカジュアルソーシャルアクションを通じて、がん治療研究を応援する取り組みも実施。2月には「deleteC -HOPE-」という授賞式を開催し、がん治療研究を推し進める医師・研究者に寄付をお渡ししています。
浦安D-Rocks 内山:取り組みが、どれもとてもユニークですよね。とはいえ企業・団体が自身のブランドロゴや商品、またはサービス名からCancerの頭文字である「C」の文字を消すというのはなかなかチャレンジングな試みだったのではないでしょうか。
小国さん:大切なCを消していただくのですから、もちろんハードルは決して低くないと思います。しかし、だからこそ実現できた際の、その社会的インパクトは大きいと思っています。浦安D-Rocksさんにも参画いただきましたよね。
浦安D-Rocks 内山:小国さんと初めてお会いしたのが、2019年ぐらいでしたっけ。
小国さん:はい、当時はまだ「deleteC」の法人化前のタイミングでした。そこから、とんとん拍子で話が進んでいきました。なぜ当時まだ団体発足から間もなかった私たちに興味をお持ちいただけたのでしょうか。
浦安D-Rocks 内山:理由はいくつかあります。でも、決め手になったのは小国さんと会って「deleteC」の取り組みを聞いた時に、すごくカジュアルだなっていう印象を受けたことが大きいです。がんに向き合うことってすごく悲しいし、難しいことだと思っていたので、ギャップというか。
実は当時(旧シャイニングアークス)、チームメイトだった通訳にがんに罹患して治療に向き合っている方がいて。最近こういうプロジェクトを聞いて、と「deleteC」の話をしたら、すごく共感してくれて、元気になったら手伝わせて欲しいそして応援すると言ってくれたんです。その後、残念ながらご一緒する機会はなくなってしまい、まあ約束じゃないですけど、なんかそういう思いも強くて。
小国さん:そんなことがあったんですね。
浦安D-Rocks 内山:いまや二人に一人ががんになる時代と言われていますが、改めて他人事ではないと思わされました。当時、チームの中には白血病を経験した選手もいましたしね。それを機にスポーツに何かできることはないのか、とより一層考えるようになりました。
特に、浦安D-Rocksには親会社のNTTドコモの存在があります。NTTグループ各社全33万人の社員の中には、がんの治療をしながら働いている人もいれば、自身の家族ががん当事者ということも少なくありません。日本の企業の多くが「健康経営」を掲げていますが、がんという特定の病気に対するアプローチはおそらく少ないと思います。だからこそ、がんに対する新しい試みにチャレンジしようと。
小国さん:おっしゃる通り、日本人の二人に一人が生涯でがんになる今、必要なのはやはり「かろやかさ」なんじゃないかなと思うんです。がんというあまりにも大きな課題、テーマを前にするとどうしても足がすくんでしまって、「何かをしたい!」という思いがあってもなかなか一歩が踏み出せないものだと思います。
浦安D-Rocks 内山:あと当時、浦安D-Rocksのホームタウンである、浦安市が、がんが市民の最大の死亡原因となっていることなどを踏まえて「浦安市がん対策の推進に関する条例」を制定したんです。そういったタイミングも重なって、「deleteC」に参画させていただくことになりました。
「楕円のご縁」でつながる。カジュアルソーシャルアクションの広げ方
小国さん:そういえば、2019年10月に開催した「deleteC」発足イベント(「SCRUM!MARUNOUCHI」)では、11人のラガーマンにもお越しいただきましたよね。
浦安D-Rocks 内山:そうでしたよね。他チームも含めて(計4チーム)現役選手が集ってくれました。「deleteC」はイベントもそうですが、うねりを生み出すような巻き込みが印象的です。
ラグビーにも“ラグビー仲間たちとの合言葉”として知られる「ONE TEAM」という言葉がありますが、まさにそれを体現しているような面々が揃っていましたよね。
小国さん:ありがとうございます。当時は本当にいろんな個人、企業から賛同していただき、様々な嬉しい言葉をいただきました。ですが、やっぱりああいう場にスポーツ選手がいることの影響力は大きいなと改めて感じています。
あるラグビー選手がこう言っていました。「ファンの皆さんからもらう応援の力をよく知っている僕たちだから、僕も自分にできることを行い、がんの治療研究への応援につながることができればと思っているんです」。選手たちのこうした力強い言葉を受け取ったファンは意識や行動が変わっていくかもしれませんし、選手のメッセージや行動の力というのはものすごいものがあると思っています。
浦安D-Rocks 内山:ところで「deleteC」の発信で何か意識されていることはあるんですか?
小国さん:deleteCのアクションに参加していただく個人、企業の方には「why deleteC(なぜdeleteCに参加するのか?)」という想いをお聞きして、その想いをしっかり発信するようにしています。
誰もが参加できるアクションであることは大切なのですが、それが誰かを傷つける表現になっては絶対にいけませんし、そのアクションが誰にとっても希望に感じられるようなものにしたいと思っています。ですから、僕たちはCを消すというアクションのユニークさだけを前面に立てて発信するのではなく、一人ひとりの「想いを可視化する」ことを大切にしています。
たとえば、ある中学生の女の子が話してくれた「why deleteC」は「自分にもできることがあった」でした。彼女は中学校に入って、学校になかなか行けなくなってしまいました。夢であった医者になることを諦めかけていた時に、deleteCのことを父親から聞いて、「あ、これなら自分にもできる!」と思ったそうです。そこから彼女は猛然と動き出し、地域の大人たちも巻き込んで、たくさんの想いと寄付を集めてくれました。
一人ひとりの力は小さいかもしれませんが、こうした想いが集まって、重なって、広がっていくことで、「がんを治せる病気にする」という未来をみんなで手繰り寄せることができるのではないかと思っています。
試合を見に行くだけで、がんを治せる病気にする「deleteC」マッチ開催!
小国さん:今度、浦安D-Rocksさんと「deleteC」マッチを開催することが決まりましたよね。
浦安D-Rocks 内山:そうなんです。2025年3月14日(金)に秩父宮ラグビー場で「deleteC」マッチを開催することになりました。
小国さん:deleteCマッチが初めて開催されたのは2020年1月。チームの垣根を越えて、たくさんの選手が募金活動を実施してくれました。
そして、2022年2月には、元ラグビー日本代表のキャプテン、廣瀬俊朗さんが発起人となり、1得点が1万円の寄付になるという特別なチャリティマッチがリーグワンの公式戦で行われました。
今回のdeleteCマッチはこれまでのものとはまた一味も二味も違う、スケール感があるものになりそうです。
浦安D-Rocks 内山:今回のdeleteCマッチは秩父宮ラグビー場での開催時に実施となります。実はチームとして2月から5月の東京都内での4試合を「東京4DAYS」と題し、浦安D-Rockをもっと知っていただくための施策を企画しています。
「東京4DAYS」の2試合目に当たる、3月のdeleteCマッチは、来場いただいたみなさまに対して、deleteCの基調カラーでもあるマゼンタカラーのBBシャツの配布、選手も3月14日限定のマゼンタカラーのユニフォームを着用したりするなど、会場全体をマゼンタで染めるアクションを起こします。
そして、この試合ではユニフォームの前面にあるNTTdocomoの「c」を消して、「do_omo=どーも」にします。
試合の準備段階・当日にがんという病気を考え、試合終了後からはファンが日常の中で健康やがんとの向き合い方に行動変容を起こすきっかけ作りに寄与できればと考えております。
小国さんがおっしゃっていたD~Rocksのカジュアルソーシャルアクションな施策に株式会社NTTドコモも賛同し、協力してくてくださったという流れですね。
小国さん:最初の話に戻りますが、NTTドコモという親会社の存在は大きいですよね。33万人という社員数の規模感はもちろん、dポイントをはじめ、様々な取り組みが社会に浸透している。そんな社会的インパクトのある企業とタッグを組んで、がんと向き合い、自分たちにできることを考える取り組みを今後も一緒に考えていけたらと思っています。
浦安D-Rocks 内山:2024年11月よりドコモグループのブランドスローガンが「つなごう。驚きを。幸せを。」に一新されました。浦安D-Rocksではサポーターやファンと一緒に、ともにこのdeleteCマッチを「つなごう。Fanを。Funを。」コンセプトで盛り上げていけたらと思います。
小国さん:試合を観に行く、そのアクションが、がんを治せる病気にする一歩につながります。今後の情報も楽しみに、ぜひ当日は会場にお越しください!
企画・取材・編集:浦安D-Rocks
執筆:守屋あゆ佳