環境省とスポーツチームから生まれる、「デコ活」を通じたサステナビリティの共創と可能性

スポーツを楽しめる社会を守るために、スポーツの力でサステナビリティの実現を目指している浦安D-Rocks。社会との共創によってサステナビリティの実現をめざす「D-Rocks Sustainability Hub」では、様々な方々へのインタビュー、対談を通して、さまざまな立場の方々にサステナビリティの実現について発信していきます。

第3回は、 環境省 地球環境局 デコ活応援隊(脱炭素ライフスタイル推進室)より、中村幸弘さん、野口雄太さんにご登場いただきます。

環境省は、国が目指す2050年カーボンニュートラルの達成に向け、脱炭素と豊かさを両立した生活を実現させる新たな国民運動「デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)」を2022年に開始し、同時に「デコ応援団(新国民運動官民連携協議会)」を立ち上げました。浦安D-Rocksでも「デコ活」についての理解を深めるべく、環境省の担当者を招いた勉強会を開催してきました。

今回は、サステナビリティに興味関心を持つ佐藤大樹選手も対談に参加。「デコ活」の活動について伺うとともに、スポーツチームとして、浦安D-Rocksが何をできるのか、スポーツの共創の可能性や今後の展望を語ります。

気候変動問題には行動変容待ったなし。選手は気候変動をどう捉えている?

浦安D-Rocks 柳原: 環境省のみなさんには、これまでも「デコ活」をはじめ、サステナビリティに関する勉強会を開催していただいてきましたが、まずは、改めて「デコ活」について教えていただけますか。

環境省 中村さん: 「デコ活」は、二酸化炭素(CO₂)を減らす(DE)脱炭素(Decarbonization)と、環境に良いエコ(Eco)を含む"デコ"と活動・生活を組み合わせた新しい言葉です。国が目指す2050年カーボンニュートラルの達成には、企業や自治体などの頑張りだけではなく、国民のみなさんの協力が不可欠です。もはや、意識啓発だけでは間に合わないんですね。

そこで、「デコ活アクション」として、環境負荷の少ない具体的なアクションを提示しながら、一人ひとりの行動変容、ライフスタイル転換を強力に後押しすることを目指しています。

 

浦安D-Rocks 柳原: お二人は、その”応援隊”なわけですね。

環境省 中村さん: はい。「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」を促していくことが我々のミッションです。

環境省 野口さん: 国民のみなさんにアンケートを実施すると、気候変動や脱炭素について、言葉の意味や課題感を理解してはいるものの、具体的な解決のためのアクションがわからない、という声をよくいただきます。

佐藤選手は、浦安D-rocksで活躍する現役ラグビー選手でありながら、「サステナビリティ」に興味があるとのことですが、普段からこの分野の課題などについて考えることはありますか?

浦安D-Rocks 佐藤: 高校時代から理科が好きで、特に太陽光発電、再生可能エネルギーに興味を持っていました。自分でも調べたりしていたものの、専門的なことは正直さっぱり……。だけど、環境省の方の勉強会は印象深く覚えています。もともと興味がある分野だったので、「デコ活」の話を聞いたときは特に違和感なく、スッと入ってきましたね。

環境省 野口さん: 行動変容につなげるためには、まず、興味を持つことが大事だと思っています。

浦安D-Rocks 佐藤 : 他の選手も気候変動は他人事ではない、という感覚があると思います。特に、今年の夏なんかは異常なぐらい毎日暑かったですよね。今日も暑いですが、とにかく昼は暑さが危険すぎて、もうラグビーの練習ができないんです。練習のスケジュールを変えざるを得ない状況になっています。

環境省 中村さん: 環境省でも暑さを科学的に分析して対策を考えるべく、「熱中症対策室」というチームが新設されました。「外出を控えろ」という時代、スポーツ選手はもちろん、観客のみなさんにも影響がありそうですよね。

浦安D-Rocks 石神おっしゃるとおりで、先日、育成世代を対象とした「D-Rocks SUMMER CAMP」を実施した際、我々が一番徹底したのが熱中症対策です。参加する保護者の方からも熱中症対策に関する様々なご意見をいただき、関心の高さを感じています。

フィールドで危機感を抱く選手自らが気候変動問題について発信するインパクト

 

浦安D-Rocks 柳原: 「デコ活」に話を戻すと、この活動を推進していくためのプラットフォームとして国、自治体、企業、団体、個人による官民連携の協議会である「デコ活応援団」がつくられています。

環境省 中村さん: こういった取組を我々、省庁だけで推進するとなると、どうしても教科書的になってしまう部分があります。特に「デコ活」は、ターゲットが国民のみなさんであり、対象となる分野がかなり広い。様々な自治体、企業、団体、個人を巻き込みながら、一人ひとりのライフスタイルに根ざした取組にする必要があります。

浦安D-Rocks 佐藤: ラグビーを継続的に楽しめる社会づくりを目標に掲げている浦安D-Rocksも、「デコ活応援団」として活動に参画しています。

環境省 野口さん: スポーツには、我々では成し得ないムーブメントの起こし方ができると思って期待しています。いい意味で、スポーツチームは、ターゲットが絞れていると思うんですよ。選手、ファン、スタッフらによる顔の見える関係性が築けているというか。密度の高い交流が、継続的に可能ではないでしょうか。

浦安D-Rocks 佐藤: たしかにスポーツは、”みんなでやる”という巻き込み方が得意かもしれません。ファンの人たちと一緒にやっていくアクションを考えていくことは、僕もぜひ一緒にやってみたいです。

環境省 中村さん: それに、同じ情報を発信するにしても省庁から発信するより、選手たちから発信する方が届きやすいこともあります。特にこれからの未来を担う子どもたちにとって、アスリートは「ヒーロー」ですから。そんなヒーローたちが、気候変動や環境問題について話すことは、すごく影響力があると思います。

浦安D-Rocks 柳原: スポーツができなくなってしまう未来があるかもしれない。選手は、気候変動や環境問題の専門家ではないですが、危機感を持っている当事者だからこそ、伝えられることがありそうですね。

環境省 中村さん: それに、地域に根ざしたスポーツチームは、地元との密着度も高い。スポーツチームをきっかけに、地域を巻き込んだサステナブルなエンターテインメントが実現できたら楽しそうだなと思います。

浦安D-Rocks 石神: シーズンオフのタイミングで、そういうエンタメが仕掛けられたら良さそうですね。ラグビーのシーズンは冬で、夏場は練習を公開していることもありますが、どうしてもファンとの距離ができてしまう時期。本当は、もっと一年中ファンのみなさんと交流できるような場があったらいいと思っていたので、ぜひ実現させたいですね。

環境問題を押し付けるのではなく、生活を豊かにする手段としての「デコ活」へ

浦安D-Rocks 柳原: ここまで、「デコ活」について、スポーツチームとして何ができるかなどを話してきましたが、みなさんが今日の場で何か感じた気づきはありますか?

浦安D-Rocks 佐藤: 改めて気候変動問題の深刻さを考えさせられるとともに、いかにアクションを起こしていけるかが大事だと気づかされました。

僕としては、やはりファンの人たちと一緒にこの問題に向き合って、環境問題を押し付けるのではなく、みんなでラグビーを楽しめる環境を残し続けていきたいと思っています。

環境省 野口さんまさに、どうしたらみんなで楽しく我慢せずに「デコ活」に取り組んでもらえるかという視点が重要です。人ってポジティブな体験が積まれることで、その行動が習慣につながっていくと思います。いかに「デコ活」という取組が、押し付けにならないようにみなさんに感じてもらえるかを私たちも日頃から意識しています。

浦安D-Rocks 佐藤: 「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしの10年後」で紹介されているように「デコ活」の取組って決して難しいものではないですよね。それに「お得」なものも多い。僕自身もどんどん日常的にも取り入れていきたいと思いました。

環境省 中村さん: スポーツには、スポーツだからこそ生み出せる感動や楽しさがあると思っています。それって豊かさに繋がっていますよね。well-beingという言葉もありますが、「デコ活」も一人ひとりの生活が豊かになるきっかけとして、多くの人に知ってもらいたいです。

まだまだ、「デコ活」を知らない方も多いと思うので、みなさんと連携して、ぜひ一緒に盛り上げていきたいです。

浦安D-Rocks 佐藤: ご存知のように、ラグビーは一人では試合ができません。色々な場面で様々な人たちと繋がりながら、力を合わせていきたいです。

 

企画・取材・編集:浦安D-Rocks

執筆:守屋あゆ佳